推拿&推拿整体(概説)

経絡、ツボおよび十四経脈

中医学では、気(=生命エネルギー)の体内における通り道を ” 経絡(けいらく) ”と呼び、気がバランス良く円滑に体内の経絡を流れることで、心身の健康が維持できると考えられています。

また、各経絡に沿って、”ツボ(経穴) ”と呼ばれる特定のポイントがあり、気はそのポイントから体の表面近くへと流れています。

推拿においては、ツボへ強い圧力をかけることによって、気の流れに直接働きかけを行います。

”十四経脈 ”とは、経絡の中で治療に使われる代表的なものであり、特定の臓腑とそれぞれが深く関わる十二経脈および体の正中線を周回する任脈と督脈を合わせた総称です。


肝経(かんけい) 足の厥陰肝経(けついんかんけい)

大敦(だいとん) → ~ → 期門(きもん)の経絡

代表的ツボ:太衝(たいしょう)、中都(ちゅうと)、曲泉(きょくせん)

効果的な治療症状:頭痛、めまい、顔面の痙攣、月経前症候群、イライラ、情緒不安定etc.


胆経(たんけい) 足の少陽胆経(しょうようたんけい)

瞳子髎(どうしりょう) → ~ → 竅陰(きょういん)の経絡

代表的ツボ:風池(ふうち)、肩井(けんせい)、環跳(かんちょう)、風市(ふうし)、陽陵泉(ようりょうせん)、足臨泣(あしりんきゅう)

効果的な治療症状:片頭痛、耳の不調、肝臓の不調、首/肩/脚/膝/外踝の痛み、坐骨神経痛etc.


心経(しんけい) 手の少陰心経(しょういんしんけい)

極泉(きょくせん) → ~ → 少衝(しょうしょう)の経絡

代表的ツボ:少海(しょうかい)、神門(しんもん)

効果的な治療症状:心臓の不調、鬱病、不眠症、手首の痛み、舌の不調etc.


小腸経(しょうちょうけい) 手の太陽小腸経(たいようしょうちょうけい)

少沢(しょうたく) → ~ → 聴宮(ちょうきゅう)の経絡

代表的ツボ:肩貞(けんてい)、臑兪(じゅゆ)、天宗(てんそう)、県外兪(けんがいゆ)、肩中兪(けんちゅうゆ)

効果的な治療症状:肩甲骨/背中の中上部/首の痛み、手首/肘の痛みetc.


心包経(しんぽうけい) 手の厥陰心包経(けついんしんぽうけい)

天池(てんち) → ~ → 中衝(ちゅうしょう)の経絡

代表的ツボ:曲沢(きょくたく)、内関(ないかん)、大陵(たいりょう)、労宮(ろうきゅう)

効果的な治療症状:心臓と胸部の不調、不安感/パニック発作、手根管圧迫症候群etc.


三焦経(さんしょうけい) 手の少陽三焦経(しょうようさんしょうけい)

関衝(かんしょう) → ~ → 絲竹空(しちくくう)の経絡

代表的ツボ:外関(がいかん)、天井(てんせい)、臑会(じゅえ)、肩髎(けんりょう)

効果的な治療症状:目と耳の不調、片頭痛、肋骨の痛み、首/肩関節/手首/肘の痛みetc.


脾経(ひけい) 足の太陰脾経(たいいんひけい)

隠白(いんぱく) → ~ → 大包(だいほう)の経絡

代表的ツボ:公孫(こうそん)、三陰交(さんいんこう)、陰陵泉(いんりょうせん)、血海(けっかい)

効果的な治療症状:脾臓/胃の痛み、腹部の張り、脚/踝の浮腫み、月経前症候群/月経不調、不眠症etc.


胃経(いけい) 足の陽明胃経(ようめいいけい)

承泣(しょうきゅう) → ~ → 厲兌(れいだ)の経絡

代表的ツボ:梁丘(りょうきゅう)、犢鼻(とくび)、足の三里(あしのさんり)、解谿(かいけい)

効果的な治療症状:頭痛、歯痛、顎の痛み、顔面麻痺、腹部の張り、下痢、便秘、膝/脚の前面痛みetc.


肺経(はいけい) 手の太陰肺経(たいいんはいけい)

中府(ちゅうふ) → ~ → 少商(しょうしょう)の経絡

代表的ツボ:中府(ちゅうふ)、雲門(うんもん)、尺沢(しゃくたく)、列缺(れつけつ)、太淵(たいえん)

効果的な治療症状: 肺の不調、咳、喘息、胸/喉/親指の痛みetc.


大腸経(だいちょうけい) 手の陽明大腸経(ようめいだいちょうけい)

商陽(しょうよう) → ~ → 迎香(げいこう)の経絡

代表的ツボ:合谷(ごうこく)、曲池(きょくち)、臂臑(ひじゅ)、肩髃(けんぐう)

効果的な治療症状:頭痛、歯痛、鼻づまり、肩関節の前面痛み、手首/手/親指の痛みetc.


腎経(じんけい) 足の少陰腎経(しょういんじんけい)

湧泉(ゆうせん) → ~ → 兪府(ゆふ)の経絡

代表的ツボ:湧泉(ゆうせん)、太谿(たいけい)、照海(しょうかい)、陰谷(いんこく)

効果的な治療症状:背中下部の痛み、喘息、浮腫み、膝の裏側痛み、手足の冷えetc.


膀胱経(ぼうこうけい) 足の太陽膀胱経(たいようぼうこうけい)

晴明(せいめい) → ~ → 至陰(しいん)の経絡

代表的ツボ:天柱(てんちゅう)、肺兪(はいゆ)、心兪(しんゆ)、膈兪(かくゆ)、肝兪(かんゆ)、脾兪(ひゆ)、胃兪(いゆ)、

腎兪(じんゆ)、大腸兪(だいちょうゆ)、承扶(しょうふ)、委中(いちゅう)、承山(しょうざん)、崑崙(こんろん)

効果的な治療症状:目の不調、背中下部/脚の裏側/外踝の痛み、排尿障害、あらゆる内臓の不調etc.


任脈(にんみゃく)

会陰(えいん) → ~ → 承漿(しょうしょう)の経絡(陰の正中線) 

代表的ツボ:中極(ちゅうきょく)、関元(かんげん)、気海(きかい)、中脘(ちゅうかん)、膻中(だんちゅう)


督脈(とくみゃく)

長強(ちょうきょう) → ~ → 齦交(ぎんこう)の経絡(陽の正中線)

代表的ツボ: 命門(めいもん)、大椎(だいつい)、百会(ひゃくえ)

*注)任脈と督脈は、十二経脈の気の流れと通じ合って、全般の気の流れを調節する。


<参考文献>

■「スイナ式中国整体」 著者:マリア・マーカティ 発行元/発売元:ガイアブックス/産調出版

■「ツボ単」 著者:坂元大海、原島広至 監修:形井秀一、高橋研一 発行者/発行所:吉田隆/

株式会社エヌ・ティー・エス

■「実用中国手技療法」基本編/臨床編 著者:張軍 発行元/発売元:ガイアブックス/産調出版

■「プロの整体術・伝授」 著者:中山隆嗣 発行者/発行所:東口敏郎/株式会社BABジャパン  他




推拿整体の手技

推拿は、東洋医学の流れを汲む中国伝統医療の一つとして長い歴史を誇っています。

指圧、マッサージ、カイロプラクティックなど多くの整体施術の礎となっています。

ここでは、推拿の代表的手技について、簡潔に紹介しています。

実践面では、症状に対応する適切な手技選択とそれらの複合的な組み合わせで施術していきます。


◆按法(あんぽう)

指、手掌、肘などを使って、対象部位やツボを垂直に軽く抑える手技です。

内部組織の気血水の流れを良くし、痛みを和らげる効果があります。


◆圧法(あつほう)

指、手掌、肘などを使って、皮下深層軟部組織まで押して、持続的に圧力を加える手技です。

刺激が強い手技であり、被施術者の反応を見ながら緩やかに圧力を強めるように垂直に押していきます。

内部組織の気血水の流れを良くする、筋肉の痙攣を抑える、痛みと腫れを鎮める効果があります。


◆推法(すいほう)

指腹、手根、手掌などを使って、水平方向に、かつ、一方向に体表部を推していく手技です。

上皮組織の血流を良くし、筋肉や腱をほぐす効果があります。


◆一指禅推法(いっしぜんすいほう)

親指の関節を屈伸させ、指先、指腹、偏峰を使い、対象部位やツボに連続してリズミカルに力を加える手技です。

繰り返し動作によって、鋭い圧力を一点に浸透させることができ、鍼治療と同様の効果があります。


◆摩法(まほう)

指腹や手掌を使って、体表部で円を描きながら摩擦する手技です。

血流を良くし、瘀血を取り除き、痛みや腫れを鎮める効果があります。


◆拿法(なほう)

親指と人差し指&中指、または親指と四指を使って、皮膚軟部組織をつかむ(両側から押さえる)手技です。

血流やリンパの流れを良くし、筋肉の痙攣を抑える効果があります。


◆捏法(ねつほう)

親指と人差し指&中指、または親指と四指を使って、対象部位をはさみ、こねる手技です。

気血の流れを促し、筋肉や腱をほぐし、痛みを和らげる効果があります。


◆揉法(じゅうほう)

指腹、手掌、手根、肘部などを使って、対象部位に圧力を加えて、時計回りまたは反時計回りに揉む手技です。

内部組織に圧力を与えながら皮膚を動かすことによって、マッサージ効果が得られ、血流が良くなると共に

筋肉群をほぐす効果があります。


◆擦法(さっぽう)

手掌や手根、指球を使って、対象部位を往復方向に動かして、摩擦熱を起こす手技です。

体を温かくして気血の流れを促進する効果があります。

内部組織に圧力を与えながら皮膚を動かすことによって、マッサージ効果が得られ、血流が良くなると共に

筋肉群をほぐす効果があります。


◆こん法(こんぽう)

手を軽く握り、手の甲を体の上で転がすもので、比較的新しい手技ですが、効果的で重要な手技の一つです。

血流を良くし、関節を柔らかくし、筋肉や腱を伸ばす効果があります。


◆振法(しんぽう)

主に腹部を治療対象に、手を小刻みに揺らして、振動させる手技です。

気血の流れを改善して、胃腸の動きを増進する効果があります。


◆叩打法(こうだほう)

軽く握った拳の側面、または両方の手掌を合わせた側面を使って、対象部位を叩く手技です。

気血の流れを促し、疼痛を軽減し、靭帯や軟骨組織の動きを滑らかにする効果があります。


◆ばつ法(ばつほう)

親指の指腹、手根、肘などをリズミカルに動かし、筋肉の深層に達するように筋肉を弦のように弾く手技です。

血流を良くし、瘀血を取り除き、筋肉の痙攣を抑える効果があります。


◆抖法(とうほう)

腕または脚を治療対象に、両手で被施術者の手または足をつかみ、引っ張りながら揺さぶる手技です。

関節の周りの筋肉を伸ばし、関節部分の血流を良くする効果があります。


◆揺法(ようほう)

肩、股関節、足首、手首を治療対象に、関節を軸にして環状にまわす手技です。

関節の動きを滑らかにし、関節の痛みを和らげる効果があります。


◆屈伸法(くっしんほう)

肘、膝、股関節、足首、手首を治療対象に、関節を屈伸させる手技です。

関節の可動を円滑にし、関節組織内の血流を良くする効果があります。


◆牽引法(けんいんほう)

手、肩、頸部、足、脚を治療対象に、関節の一端を固定し、体幹から離れる方向へ引き伸ばし、

関節の間隔を広げる手技です。

関節の変位を矯正して関節の運動機能を回復し、痛みを止める効果があります。


◆扳法(ばんほう)

頸部、背部、腰部を治療対象に、両手を使って施術部を同方向に引きつけたり反対方向に引き伸ばしたりする

矯正の手技です。

関節の可動性を高める、筋肉の緊張を和らげる、体のバランスを整える効果があります。


<参考文献>

■「実用中国手技療法」基本編/臨床編

  著者:張軍 発行元/発売元:ガイアブックス/産調出版

■「推拿療法」おとなと子どもの治療の徹底マニュアル

  著者:ウエイジョン・サン、アルネ・カプナー 発行元/発売元:ガイアブックス/産調出版

■「スイナ式中国整体」

  著者:マリア・マーカティ  発行元/発売元:ガイアブックス/産調出版 他